MBSR(マインドフルネスストレス低減法)


マインドフルネスとは

意図的に、今この瞬間に、価値判断にとらわれず注意を向けることにより生じる気づき

The awareness that arises by paying attention on purpose, in the present moment, non-judgmentally.

出典:Jon Kabat-Zinn, Full Catastrophe Living, 2013

マインドフルネスとは、今ここで実際に、瞬間瞬間に体験していることをありのままに感じる態度でもあります。


今日、朝起きて今ここに来るまで、どのくらいその瞬間の体験に意識が向いていたでしょうか。朝ごはんは味わって食べられたでしょうか、外の景色、空気の感触、足の裏に感じる地面の感触に気づいていたでしょうか。

次のやることをあれやこれやと考えながら動いて、気が付くと時間が経っていた。

いろいろやっているはずなのにいつも焦りがあって満足感がない。

そこには、出来事に対して自然に生じる正しい正しくない、良い悪いなどの評価や判断に気づかずに、浮かぶ考えのままに自動的に動いている「自動操縦状態」が起きているかも知れません。

この状態は、実際に起きている体験よりも苦しみを増すことにつながることがあります。

例えば、疲れを取るためのアルコールが、実は疲れの元となる体験を感じないための行動であると、自動的に飲酒を繰り返している内に健康が損なわれることがあります。

マインドフルネスを学ぶことは、常に生じる出来事に対して、大げさにとらえることも、小さくとらえることもせずそのままを感じることであり、今この瞬間をより実感を伴って味わうことの助けになります。

それは人生を豊かにすることにもつながっているかもしれません。


MBSRとは

MBSR(Mindfulness Based Stress Reduction:マインドフルネスストレス低減法)は、1979年にマサチューセッツ大学メディカルセンターのストレス低減クリニックで、ジョン・カバット・ジン博士とその同僚によって開発されました。今日では、世界中の医療機関、福利厚生機関、教育機関、ビジネスの現場等で、広く利活用されています。

MBSRは8週間にわたる、マインドフルネスの集中トレーニングです。このプログラムは、もともと、慢性的な痛みやストレスを抱える人に向けて開発されたもので、取り除くことが難しい痛みに対し、それとうまく付き合っていくことを学ぶことで、人生をより豊かにしていくことを目的としていました。今日では、医療の分野以外にも広く応用されています。

このプログラムに参加する多くの人は、自分自身の人生との関わり方をよりよいものにすることを目指しています。

注)8週間コースでは、自分の身体感覚・思考・感情に気づいていくために、静坐瞑想、ボディスキャン瞑想、マインドフルネスムーブメント(ヨガ)といった手法を使います。手法の中には仏教の瞑想方法に基づいたものが含まれますが、宗教色は全く排除されており、宗教的な勧誘等はもちろん一切ありません。


MBSRはどのような効果をもたらすのか

MBSRを通じてのマインドフルネスの学びにより、参加者は、ストレスに満ちた環境への対処の仕方をはじめとし、自分自身の行動や思考のパターンを穏やかに、かつ客観的に把握し理解することができるようになります。また、自分の身を置く環境を変えることは難しい一方で、その環境への関わり方を変えることは可能であることを学びます。MBSRでは、このことを、ある刺激に対して、自動操縦状態下で反射的に対応すること(reacting)から、よりうまく対処していくこと(responding)へ変わっていくこととして説明します。後者においては、自分自身の思考、身体感覚、感情に気づくことを通じ、環境からうける感覚をよりクリアに理解することが鍵となります。MBSRはその気づきを育てる練習なのです。


MBSRのコースについて

標準的なMBSRは8週間にわたり、各回2.5時間のセッション8回と、6週目と7週目の間にリトリート形式の終日セッションで構成されています。


事前オリエンテーション

お申し込み後、講師との1対1のオンライン面談で、コースの概要、進め方、ルール、8週間をやりぬくための方法等についてミーティングを行います。オンラインで30分程度を予定しています。

WEEK1 マインドフルネスを探索する

コースの概要を理解し、マインドフルネスをどのように生活に取り入れていくかを学びます。食べる瞑想、呼吸の瞑想、ボディスキャンなどを通じ、体験的に今の瞬間と関わることを経験します。


WEEK2 世界と自分自身をどのように感じ取るか

ものの見方が自分自身の物事への反応に影響を与えるという、重要な考え方を学びます。このセッションにおいて、感覚や思考パターンを観察し、ボディスキャンを通じてストレスに対する反応への気づきを養います。 困難に対する感覚や反応の仕方を変えることにより、自分の心身のストレスについて変化が現れます。


WEEK3 自分自身の身体とともにある

マインドフルムーブメント、座る瞑想、歩く瞑想に取り組みます。これらの練習を通じて、特別に時間をとって行う練習から、日常生活へマインドフルネスの要素を組み込んでいくことを学んでいきます。マインドフルであることは、喜びと力の双方をもたらすことに気づくかもしれません。また、練習を通じて、快、不快の両方について探索する機会が得らます。


WEEK4 ストレスとは何か

マインドフルネスの練習を通じて、自分の体験に対する興味深さとオープンさを養い、このプロセスを通じて注意をコントロールする能力を高めていきます。この週は、集中力と注意の範囲を広げていくことを学びます。ストレスのかかる状況に対して、より上手に対応していくことを学びます。


WEEK 5 ストレス:自動的反応かマインドフルな対応か

コースの半分地点として、マインドフルネスについての基本的な考え方を明確にし、より具体的な困難やストレスに対してマインドフルに対応していくことを学びます。ここでは、自分自身がいつもぶつかる繰り返し現れるパターンを、マインドフルな態度によって解体していくことを体験します。


WEEK 6 マインドフルなコミュニケーション

ストレスのかかる状況にあって、平衡を保とうとする能力が私たちにはあります。この週は、マインドフルネスを通じて、内なる力を高めていくコーピングについて学んでいきます。また、他者とのコミュニケーションの困難に対し、気づきや今にあることを対人関係にも適用することも学んでいきます。

※Practice Day(リトリート形式)

6週目と7週目の間に、リトリート形式による終日のセッションを行います。6時間ほどをかけて、生活すべてにおいてマインドフルネスを活用していく機会となります。自分自身を労わる大切な一日です。


WEEK7 自分自身をいたわる

マインドフルネスは、生活の中で生かされてこそ価値があるものです。毎日時間をとって行うフォーマルな練習は必要不可欠なものですが、これは日常生活でマインドフルネスを活用するための基礎練習です。この週では、如何に日常生活にマインドフルネスを組み込んでいくかについて学びます。


WEEK8 振り返り、前に進む

最後に、コースを通じて学んだことを振り返ります。今後、どのように日常を送っていくか、考えてみましょう。マインドフルに生活していくために困難なこと、使えるもの、自分の態度はどのようなものでしょうか。このプログラムの最後であり、また、今後の人生の始まりとなるセッションです。

それぞれのセッションは、各週で学んだマインドフルネスのエクササイズから始まります。MBSRで中心となる練習は、ボディスキャン、マインドフルムーブメント、座る瞑想です。コースの期間中、受講者はこれらのうちのいずれかに毎日取り組むことになります。さらに、日常生活をマインドフルに過ごすための練習も課されます。これらのエクササイズを通じ、自分自身の思考、身体感覚、感情へのマインドフルな気づきの力を高めていきます。

各セッションでは、講師からの説明、参加者みんなでの対話に加え、いくつかのエクササイズにより、その回に設定された重要なテーマへの理解を深めていきます。例えば、MBSRで取り扱われるトピックとして、マインドフルなコミュニケーション、困難な感情との付き合い方、物事に対する知覚がストレスフルな出来事への関わりかたに与える影響、といったものがあります。

セッションのなかでは、受講者自身が日常生活の中で感じたことだけでなく、クラスの中でのエクササイズで気づいたことについて、お互いに気づきを交換し合う場も設定されています。